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東京地方裁判所 平成5年(行ウ)45号 判決

東京都杉並区荻窪5丁目25番5号

原告

有限会社泰健商事

右代表者代表取締役

加賀屋賢三

右訴訟代理人弁護士

小川敏夫

保坂志郎

東京都杉並区天沼3丁目19番14号

被告

荻窪税務署長 熊谷良平

右訴訟代理人弁護士

西修一郎

右指定代理人

野﨑守

神谷宏行

蓑田徳昭

德永修

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告が平成元年3月28日付けでした原告の昭和61年10月1日から昭和62年9月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の更正(以下「本件更正」という。)のうち,所得金額44,196,756円及び納付すべき税額16,980,800円を超える部分並びに重加算税賦課決定(以下「本件賦課決定」といい,本件更正と併せて「本件各処分」という。)を取り消す。

第二事案の概要

本件は,原告が,他社と共同して不動産の仲介をし,原告が一括して受領した仲介手数料の一部を他社に支払ったとして,右手数料を損金の額に算入して法人税の申告をしたところ,被告から,右手数料は,共同仲介の事実がないのに支払われたものであるとして,損金への算入を否定され,本件各処分を受けたため,本件各処分の取消しを求めて提訴した事案である。

一  当事者間に争いのない事実

1  原告は,加賀屋賢三(以下「加賀屋」という。)を代表取締役とし,不動産の売買,賃貸,仲介及び管理等を業とする有限会社である。

2  株式会社田中建設(以下「田中建設」という。)は,昭和61年9月3日,株式会社オランダ商館及び株式会社ビッグ・マウント・コーポレイション(以下「オランダ商館ら」という。)から,別紙一物件目録記載1及び2の土地(以下「本件土地」という。)を代金7,700,000,000円で購入するとともに,右同日,モンド商事株式会社及び大協建設株式会社(以下「モンド商事ら」という。)に対し,本件土地を代金8,850,000,000円で売却した。

3  原告は,田中建設から,昭和61年10月7日,右の本件土地の購入及び売却に係る仲介(以下「本件仲介」という。)をしたとして,購入に係る手数料231,000,000円,売却に係る手数料265,500,000円,合計496,500,000円(以下「本件受取手数料」という。)を受領した。

原告は,ライベックス株式会社(以下「ライベックス」という。)に対し,昭和61年11月11日に100,000,000円,昭和62年9月30日に280,000,000円,合計380,000,000円(以下「本件金員」という。)を送金した。

4  原告は,被告に対し,昭和62年11月30日,本件事業年度における法人税の申告(以下「本件申告」という。)をし,その際,本件金員を支払手数料として損金の額に算入した。

その後の課税処分,不服申立て等の経緯は,別紙二記載のとおりである。

二  本件各処分の根拠についての被告の主張

1  本件更正について

(一)申告所得金額 44,196,756円

右金額は,本件申告に係る所得金額である。右金額については,当事者間に争いがない。

(二)支払手数料否認額(本件金員) 380,000,000円

右金額は,本件申告において支払手数料の科目で損金に計上された380,162,830円のうち,本件事業年度の所得金額の計算上,損金の額に算入することができないものである。

(三)本件事業年度の所得金額 424,196,756円

右金額は,(一)の金額に(二)の金額を加算したものである。

(四)納付すべき法人税額 175,867,100円

右金額は,(三)の金額に基づいて算出される法人税額177,202,320円から,法人税法(昭和62年法律第96号による改正前のもの)68条に規定する控除すべき所得税額(1,335,213円)を控除した残額(国税通則法118条1項により,100円未満の端数を切り捨てたもの)である。なお,右控除すべき所得税額が,1,335,213円であることについては,当事者間に争いがない。

2  本件賦課決定について

原告は,ライベックスが本件仲介をしていないにもかかわらず,同社に送金した本件金員を支払手数料に仮装して損金の額に算入したから,法人税の課税標準等の計算の基礎となる所得金額の一部を隠ぺい又は仮装したというべきである。

そこで,被告は,原告が本件更正により新たに納付すべきこととなった税額158,880,000円(国税通則法118条3項により,10,000円未満の端数を切り捨てたもの)につき,同法68条1項を適用して,重加算税55,608,000円を賦課決定したものである。

三  争点

本件の争点は,本件金員が,原告の本件事業年度の所得金額の計算上,損金の額に算入されるべきか否か,また,原告が,所得金額の一部を隠ぺい又は仮装したか否かであり,この点に関する当事者双方の主張の要旨は,次のとおりである。

1  被告の主張

ライベックスは,本件仲介をしていないから,原告がライベックスに対して仲介手数料の支払債務を負っていたものではなく,本件金員は,原告が,当時協住不動産サービス株式会社(以下「協住不動産」という。)の営業部長であった衛藤潤(以下「衛藤」という。)の指示によりライベックスに対して送金した使途不明の金員である。

また,原告は,衛藤の指示により,ライベックスとの間で架空の仲介支払約定書を作成して,本件金員を支払手数料に仮装したものである。

したがって,本件金員は,原告の本件事業年度の所得金額の計算上,損金の額に算入することはできないものであり,また,原告は,所得金額の一部を隠ぺい又は仮装したものというべきである。

2  原告の主張

原告は,ライベックスから,本件土地の売却先を見つけるように依頼され,本件土地に関する情報及び資料の提供を受け,右の情報等をもとに本件仲介をしたのであるから,原告とライベックスは,共同して本件仲介をしたというべきである。

したがって,本件金員は,原告が田中建設から一括して受領した本件受取手数料の一部をライベックスに分配したものであるから,支払手数料として損金の額に算入されるべきものであり,また,原告が所得金額の一部を隠ぺい又は仮装したという事実はない。

第三争点に対する判断

一  法人税法22条1項は,内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とする旨規定し,同条3項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,当該事業年度の収益に係る売上原価等,販売費,一般管理費その他の費用の額とする旨規定している。

右各規定に照らせば,内国法人の所得金額の計算上,損金の額に算入することができる支出は,当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならないというべきであり,支出のうち,使途の確認ができず,業務との関連性の有無が明らかではないものについては,損金の額に算入することができないというべきである。法人税法基本通達9-7-20が,法人が交通費,機密費,接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは,損金の額に算入しないとしているのも,このような趣旨によるものであると解するのが相当である。

ところで,所得を構成する損金の額については,本来,被告が主張,立証責任を負うべきものであるから,具体的な支出が損金の額に算入されるべきか否かが争われている場合には,被告において,その主張額以上に損金が存在しないことを主張,立証すべきである。これを,本件に則していえば,被告は,本件金員には原告の業務との関連性がないから損金の額に算入することができないこと,すなわち,本件金員は,原告とライベックスが共同して本件仲介をしたことにより,原告が本件受取手数料をライベックスに分配したものであるという事実が認められないことについて,主張,立証すべきこととなる。

もっとも,被告は,損金の存否に関連する事実に直接関与していないのに対し,原告はより証拠に近い立場にあること,一般に,不存在の立証は困難であることなどにかんがみると,更正時に存在し,又は提出された資料等をもとに判断して,当該支出を損金の額に算入することができないことが事実上推認できる場合には,原告において,右推認を破る程度の具体的な反証,すなわち,当該支出と業務との関連性を合理的に推認させるに足りる具体的な立証を行わない限り,当該支出の損金への算入は否定されるというべきである。

そこで,以下,本件各証拠に照らし,本件金員には業務との関連性が認められるか否かについて検討する。

二1  証拠(原告代表者尋問の結果,証人高橋與平(以下「証人高橋」という。),同保坂和光及び同斉藤今朝男の各証言並びに末尾に掲記の各書証)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

(一) 原告は,衛藤が出資して設立した有限会社であり,同人の妻である節子が,監査役として登記され,原告の発行済株式数の57%を保有している。また,節子及び衛藤の子である謙は,原告から給与の支払を受けていた。(乙1,4,32ないし34号証)

ライベックスは,マンション,ホテル等の企画,販売,又はそれに伴う土地の仕入れ等の業務を中心として行っていた株式会社であるが,衛藤を通じて,協住不動産等から事業資金の融資を受けたり,不動産の物件紹介,用地取得に関する業務の委託を受けるなどしていた。

(二) 協住不動産は,日本相互信販株式会社から,昭和61年2月3日,本件土地を購入した。(乙3号証の1,2)

衛藤は,協住不動産の担当者として本件土地の取引に関与し,ライベックスに対し,本件土地の購入を斡旋した。

ライベックスは,本件土地上にホテル等を建築して,その共有持分を分譲するという利用計画を立て,事業収支計画書等(甲10,11号証。以下「企画書」という。)を作成して銀行に融資を申し込んだが,融資を得ることができなかったこと,採算が合わないと判断したことなどから,本件土地の購入を断念した。(甲16,17号証)

そこで,協住不動産は,オランダ商館らに対し,昭和61年9月3日,本件土地を代金6,170,000,000円で売却し,右同日,本件土地について,オランダ商館らから田中建設に対する売却及び田中建設からモンド商事らに対する売却がされた。モンド商事らの本件土地の購入については,当時中銀マンシオン株式会社の常務取締役であった有藤亮爾(以下「有藤」という。)が仲介をした。(乙25,26,27,29号証)

同年10月3日,協住不動産からモンド商事らに対し,本件土地の所有権移転登記が経由された。(乙3号証の1,2)

以上の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。

2  また,弁論の全趣旨によれば,被告は,次のような乙号各証をもとに本件各処分をしたことが認められるので,右乙号各証の記載内容,その信用性等について検討する。

(一) 田中建設と原告との間で作成された昭和61年10月3日付け仲介料支払約定書には,田中建設が,原告の仲介により本件土地を購入及び売却し,原告に対して仲介手数料を支払う旨記載されており,ライベックスが本件仲介に関与した旨の記載はない。(乙12,13号証)

なお,原告は,原告とライベックスが共同して本件仲介をし,仲介業務手数料は原告が代表として一括受領する旨を記載した右同日付けの仲介支払約定書(甲9号証の1,2)を提出している。しかしながら,右約定書は,原告とライベックスとの間で作成されたもので,たとえ本件受取手数料の内部的な分配を定めたものであるとしても,本件土地の購入及び売却の当事者である田中建設が関与せずに,同一の仲介について,同一の日付けで,前記仲介料支払約定書とは別の約定書を作成したのは不自然であること,ライベックスの担当者であった副社長高橋與平(以下「高橋」という。)は,被告に対し,右約定書は衛藤が作成した架空の書面に衛藤の指示により押印した旨申述していること(乙16号証)などに照らすと,右約定書の作成過程には疑問があるといわざるを得ず,これをもって,ライベックスが本件仲介をしたことを推認させるに足りる書証とみることはできないというべきである。

(二) 高橋は,東京国税局調査第三部調査官斉藤今朝男及び荻窪税務署国税調査官保坂和光に対し,次のとおり申述した。(乙15ないし19号証,23号証)

ライベックスは,資金繰りが逼迫していたため,衛藤に対し,事業資金の融資を依頼したところ,同社の銀行口座に仲介手数料名目で金員が振り込まれた。ライベックスは,右借入金を,衛藤から指示された口座に,指示された金額を振り込む方法で返済し,衛藤の指示により,右借入金を受取手数料に,右返済金を支払手数料に計上するとともに,衛藤が作成した仲介支払約定書に押印した。このように処理した架空の受取手数料は総額約1,500,000,000円,支払手数料は総額約1,900,000,000円であり,差額の約400,000,000円が利息に相当するものであった。本件支払手数料も,実際には衛藤からの借入金であるが,衛藤の指示により,右のように処理したものであり,ライベックスは,原告に対し,本件土地の売却を依頼したことはないし,本件仲介を一切行っていない。

そこで,右申述の信用性について検討するに,これらは,弁護士が立ち会ったり,高橋が自らライベックスの契約内容,経理処理等を調査して,架空売上として処理したものを報告したなど,いずれも,原告との接触がない時期に,任意にされたものであること,ライベックスの代表取締役千葉隆も,借入及び返済として処理すべきものを売上及び原価として計上したことを認める旨の懇願書(乙22号証)を提出していること,ライベックスが本件仲介をしたことを否定する旨のモンド商事株式会社の代表取締役林田史範(以下「林田」という。)及び有藤の各申述(乙28,29号証)とも一致すること,本来,土地仲介を業とするものではないライベックスが多額の仲介料収入を計上していたことに符合する上,架空処理の一部には裏付けがあること(乙24号証の1ないし3),ライベックスの会計帳簿等を調査したところ,本件仲介に係る費用を支出した旨の記載は見当たらなかったこと(乙18号証)などに照らすと,少なくとも,本件支払手数料が本件仲介に基づくものでないことに関し,右申述には信用性が認められるというべきである。

(三) 田中建設の取締役若林正則(以下「若林」という。)は,被告に対し,本件仲介には原告以外は誰も介入していない旨申述した。(乙14号証の1,2号証)

右申述は,前記の高橋の申述とも一致するものであり,信用することができるというべきである。

なお,これに反する若林の上申書(甲17号証)は,右申述を変更させた理由を合理的に説明し得ていないこと,原告代表者尋問の結果によれば,その作成に当たって,加賀屋が接触したことが認められることなどから,直ちに信用することはできない。また,衛藤の陳述書(甲16号証)も,前記の高橋及び若林の申述に反するものであり,直ちには信用することができない。

3  以上の認定事実及び被告が本件各処分の判断根拠として採用した右乙号各証に照らせば,ライベックスは本件仲介をしていないことを推認することができるというべきである。

三1  これに対し,原告は,本件金員は,ライベックスから本件土地の情報を得るなど同社と共同して本件仲介をしたため,原告が田中建設から一括して受領した本件受取手数料の一部をライベックスに分配したものである旨主張し,原告代表者尋問の結果中及び証人高橋の証言中には,右主張にそう部分がある。そこで,以下,右供述部分及び証言部分の信用性について検討する。

(一) 右供述中及び証言中には,高橋,加賀屋に対し,本件土地の売却先を見つけるように依頼し,本件土地の情報を提供した旨の部分がある。

しかしながら,そもそも,本件土地の所有者は協住不動産であり,本件土地について,単に衛藤から購入を斡旋されただけで,何らの権利も有していないライベックスが,自分が購入を断念したからといって自ら他に売却の仲介を依頼することは,通常考え難い。また,前記認定のとおり,原告と密接な関係にある衛藤が,本件土地をめぐる一連の取引に関与していたところ,加賀屋は,ライベックスから情報を得る前から,本件土地が売りに出されていたことを認識しており,特段,ライベックスから情報を得なければならないような事情もうかがわれないこと(原告代表者尋問の結果)などに照らすと,原告がライベックスから情報を得たことによって本件仲介をすることになったというのは不自然である。しかも,右供述部分及び証言部分は,本件土地に関する情報は衛藤と有藤から得たのであって,本件土地の購入をめぐってライベックスとやり取りをしたことはなく,加賀屋のことも知らない旨の林田の申述(乙28号証)及び衛藤から本件土地の情報を得た旨の有藤の申述(乙29号証)ともくい違っている。

(二) 右供述中及び証言中には,ライベックスは,原告に対し,本件土地をライベックスが作成した企画付きで売買する旨を依頼して企画書を提供しており,企画書が本件土地の付加価値を生じさせた旨の部分がある。

しかしながら,証人高橋の証言によれば,企画書は,ライベックスが,銀行に対し,本件土地の購入資金の融資を交渉するに際し,事業目的を明確にするために作成したものであり,そこに記載されている内容をみても,本件土地上に建築する建物の構造規模,建築面積,延床面積等の建築概要や右事業計画に係る収入及び支出について簡易な試算をしたものにすぎない。しかも,原告代表者尋問の結果によれば,加賀屋は,本件土地の情報を2,30箇所に交付した際に,簡単な資料を配付したにとどまり,本件土地の買主であるモンド商事らに対して企画書の説明を行ってはいないこと,現に,モンド商事らは,企画書を利用していないことが認められる。

また,証人高橋の証言中には,田中建設やモンド商事株式会社の担当者に企画書の説明をした旨の部分があるが,説明の相手方,担当者の名前等についての証人高橋の記憶はあいまいである上,本件土地の売買契約の締結に先立ち企画書を見たことはなかった旨の林田の申述(乙28号証)にも合致せず,右証言部分は直ちに信用し難いものといわざるを得ない。

そうすると,本件仲介に当たって,企画書が付加価値を生じさせたというような実態はなく,企画書をもって,ライベックスが多額の仲介手数料を受領する根拠をうかがわせるということもできない。

(三) さらに,証人高橋は,被告及び国税局に対し,本件仲介を一切していない旨を申述していたのに,公判においてこれを覆す証言をするに至った理由について,前記申述は,国税局がライベックスの仲介を認めないという評価をしたため,その評価に合わせて申述したものであるという証言を繰り返すだけであり,申述を変遷させた理由を何ら合理的に説明しない。

この点について,原告は,当時衛藤が詐欺罪の被疑事実で強制捜査を受け,高橋も参考人として取り調べられていた状況のもとで,高橋は,衛藤がした取引への関与を否定して同人の共同正犯とされる危険を回避するために,警察のみならず,被告や国税局に対しても,虚偽の申述をしたものである旨主張するが,右主張は,単なる推測の域にとどまるものであり,これを裏付けるに足りる証拠はない。

(四) 以上のように,右供述部分及び証言部分は,不自然な点が多々あり,関係者の供述とも一致しておらず,証人高橋の証言に至っては,申述を変遷させた理由を合理的に説明し得ていないことにかんがみると,これらを信用することはできないというべきである。

2  そうすると,右供述部分及び証言部分をもって,ライベックスが本件土地の仲介をしていないという前記推認を覆すことはできず,他に前記推認を覆すに足りる証拠はない。

したがって,原告において,本件金員と業務との関連性を合理的に推認させるに足りる具体的な立証をしたものとは認められないから,本件金員を損金の額に算入することはできないというべきである。

また,以上によれば,原告は,ライベックスが本件仲介をした事実がないにもかかわらず,本件金員を支払手数料に仮装して損金に算入したことが認められるから,国税の課税標準の計算の基礎となるべき事実の一部を隠ぺい,仮装したというべきである。

3  なお,原告は,ライベックスが本件金員を仲介手数料として計上し,収入として申告していること,原告はライベックスから本件金員の支払に先立つ昭和62年9月29日に150,000,000円を借り入れていること(甲3号証)などを理由に,被告は,本件金員は原告がライベックスに貸し付けたものであるという事実を立証し得ていないと主張する。

しかしながら,本件金員の損金への算入を否定するには,被告において,本件金員が借入金であることについての具体的な立証までをも要するわけではなく,前記1のとおり,少なくとも使途が不明確のものであり,業務との関連性がないことを立証すれば足りるのであるから,原告の右主張は,失当であるというべきである。

四  以上の認定事実及び前記第二,二の当事者間に争いのない事実を前提にすると,原告の本件事業年度の所得金額は,424,196,756円,重加算税額は,55,608,000円となり,それぞれ被告の主張額と同じになるから,本件更正及びこれに伴う本件賦課決定には,違法がない。

よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却すべきこととなる。

(裁判長裁判官 秋山壽延 裁判官 竹田光広 裁判官 森田浩美)

〈以下省略〉

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